映画評論家のみうらじゅんが、VHSテープを題材にした映画作品の公開を機に、アナログメディアの復権について言及した。デジタル配信が主流となった現代において、あえて物理メディアに回帰する動きは、単なる懐古趣味ではなく、コンテンツ体験の多様性を求める文化的変化の表れといえる。
参考: みうらじゅんの映画チラシ放談(第152回)ここにきてVHSテープのリバイバル(笑)? 『V/H/S ビヨンド』『キムズビデオ』(ぴあエンタメ情報)
分析・見解
VHSテープのリバイバルは、2010年代後半からレコードが再評価された流れと本質的に同じ構造を持つ。ストリーミング配信が「所有から利用へ」というパラダイムシフトを完成させた結果、逆説的に「所有することの価値」が再発見されている。特に映画『V/H/S』シリーズは、VHSという媒体が持つ画質の粗さやノイズを、ホラー演出の一部として積極的に活用した点で画期的だ。デジタル映像の完璧さが当たり前になった今、むしろ不完全性が持つ生々しさや臨場感が、新しい表現価値として認識されている。キムズビデオのドキュメンタリーも、物理メディアのコレクション文化が単なる保存活動ではなく、キュレーションという知的営為であることを示している。この動きは音楽業界におけるカセットテープの再流行とも連動しており、Z世代を中心に「体験したことのないレトロ」を新鮮なものとして受容する現象が起きている。ただし、VHSの場合は再生機器の入手困難性という物理的制約があり、レコードほどの大衆化は見込めない。それゆえに、より限定的でマニア向けの文化として深化する可能性が高い。
ビジネスへの影響
コンテンツ事業者にとって、この動きは差別化戦略の新たな選択肢を提示している。特に限定版や特典付き商品として物理メディアをリリースすることで、デジタル配信では得られない付加価値を創出できる。実際に一部のインディーズ映画配給会社は、VHSリリースを話題作りの手段として活用し始めている。また、レトロメディアを活用したマーケティングは、ブランドの独自性を打ち出す手段としても有効だ。ただし、ターゲット層の見極めが重要で、幅広い層ではなく熱心なファン層への訴求に特化すべきである。物理メディアの復権は、デジタル一辺倒の戦略を見直し、多様な接点を持つことの重要性を示唆している。